春の嵐が過ぎ去って、
街はいよいよ始まりのムード。
ご両親に連れられて歩く、少し大きめの制服とすれ違う。
おろしたての匂い。
心に流れるメロディーはもちろん
ア、ピッカピッカの〜♪
条件反射。
そう、この時期になると思い出すシーンがある。
あれは中学校の入学式のこと。
式のあとの教室、ひとりひとり起立して自己紹介をする時間があった。
出席番号順で並ぶ机。
ある女の子の番になった。
なんだか、とても影の薄い子だった。
小さく立ち上がり、見た目どおりのか細い声で、こう言った。
「〇〇〇子です。誰でもいいので友達になって下さい」
その日から、卒業するまでの三年間。
彼女には友達がいなかった。
そうなるであろうことは、あの時に分かっていた。
中学生の自分が持つ語彙ではうまく言葉にできなかったけれど、
感覚的に分かった。
どこに、何に、フォーカスするかで自分の世界は決まる。
「誰でもいいから友達になって」という孤独な世界を、
彼女は作り上げてしまっていた。
そこにはその子しかいないから、
「誰でも」が「私」を呼んでいる声ではないと、他の子にも分かっていた。
子供は鋭くて正直だから、
「誰にでも」分かってしまった。
そんな、ずっと心に引っかかっている出来事。
強く影響を受けているからこそ、ここまで憶えているのだろう。
『引き寄せ』が話題になり始めた頃にも思い出していた。
申し訳ないが反面教師の一例として。
そして、さらに今。
また別の角度から考えている。
もし今の自分だったら、声をかけてあげることもできるのかな。
おう、友達になろうぜ!なんて。
僕は僕の世界の中で、あの子を笑わせたりしてみたい。
傍観しているよりも、そっちのほうが楽しそう。
今だったらそうしたいのに。
あれから随分と時間は流れた。
春はもう何度となく訪れた。
その中で、あの子にもいい友達はできただろうか。
できていたらいいなあ。
きっと、できていると思う。
人は変わってゆくものですから。
posted by iMAGINATIONS at 14:42| 東京 ☀|
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