2013年04月08日

入学式の思い出から


春の嵐が過ぎ去って、

街はいよいよ始まりのムード。

ご両親に連れられて歩く、少し大きめの制服とすれ違う。

おろしたての匂い。

心に流れるメロディーはもちろん

ア、ピッカピッカの〜♪

条件反射。



そう、この時期になると思い出すシーンがある。



あれは中学校の入学式のこと。

式のあとの教室、ひとりひとり起立して自己紹介をする時間があった。

出席番号順で並ぶ机。

ある女の子の番になった。

なんだか、とても影の薄い子だった。

小さく立ち上がり、見た目どおりのか細い声で、こう言った。

「〇〇〇子です。誰でもいいので友達になって下さい」



その日から、卒業するまでの三年間。

彼女には友達がいなかった。



そうなるであろうことは、あの時に分かっていた。

中学生の自分が持つ語彙ではうまく言葉にできなかったけれど、

感覚的に分かった。





どこに、何に、フォーカスするかで自分の世界は決まる。

「誰でもいいから友達になって」という孤独な世界を、

彼女は作り上げてしまっていた。

そこにはその子しかいないから、

「誰でも」が「私」を呼んでいる声ではないと、他の子にも分かっていた。

子供は鋭くて正直だから、

「誰にでも」分かってしまった。



そんな、ずっと心に引っかかっている出来事。

強く影響を受けているからこそ、ここまで憶えているのだろう。

『引き寄せ』が話題になり始めた頃にも思い出していた。

申し訳ないが反面教師の一例として。



そして、さらに今。

また別の角度から考えている。

もし今の自分だったら、声をかけてあげることもできるのかな。

おう、友達になろうぜ!なんて。

僕は僕の世界の中で、あの子を笑わせたりしてみたい。

傍観しているよりも、そっちのほうが楽しそう。

今だったらそうしたいのに。



あれから随分と時間は流れた。

春はもう何度となく訪れた。

その中で、あの子にもいい友達はできただろうか。

できていたらいいなあ。

きっと、できていると思う。

人は変わってゆくものですから。



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posted by iMAGINATIONS at 14:42| 東京 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする